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バレンタインSSお返しクラウン・クラウン→ルシアンさん [捧げ物/フリー]

らけ様企画第2弾(なのかな?)で書いていただいたSS。
今度はルシアンさんとC.Cでした。(第1弾は椿嬢とix)

「シロハトマジック」
サイトへの直リンはどうかと思ったので、気になる方はらけ様のブログからサイトへGoです。
・らけ様のブログ 「Made in LAKEY:)」

正直ルシアンさんからいただけるとは思っていませんでした~。一応男性ですし。
しかし頂いた以上はお返しするのが礼儀というもの!…ではなかろうか。
「また駄文か、興味ねぇ…」とこっそりため息を吐かれた方は回れ進めー!
あ、最後に明日使えるかどうかわからない無駄知識があるヨ☆



<<Warming chocolate>>


人垣が崩れた。
帽子を押さえて深々と頭を下げるオレの周囲に三々五々と散っていく足。
うー、寒ぃ~…。
本格的な春まではまだ間のあるストリートの寒風が吹きつけ、オレはこそっと身震いした。

「あ、あのっ!これ…」

頭上からの声に体を起こすと、三人組のオンナノコ。
その一人の手には可愛らしい色の包装紙とリボン。
自分に?
というゼスチャーを見せると、その子はうんうんと首を縦に振る。
驚いたパントマイムで相手を笑わせてからにっこり笑って受け取り、それを片手に持ったままお返し代わりの簡単なマジックをこっそり見せる。
思わぬお返しだったのか小さな歓声が上がり、彼女たちは嬉しそうに会話を交わしながら手を振って去っていった。こちらもつつがなく手を振り返す。
が、背を向けてからオレはこっそりため息をついた。

二月は月初めからこういうのが多い。
特にバレンタイン当日ともなると、何故か歩いてるだけで群がられて、持ちきれないほどのチョコ攻撃をくらったりする。
特に手紙の付いてるのは要注意。後がコワイ。
このショーはこれだけか、ありがたやー…などと世の男性諸君からしたら罰当たりなことを考えつつトランクの中をざっと整理していると、いきなり隣に気配を感じた。

「シャワーって…」

そういう声は数ヵ月のアシスタント業で聞き慣れたもの。
こんな表通りで聞くのは珍しいが、道具の持ち逃げだけはありえないから片付けを再開する。

「難しくない?僕苦手なんだよねー」

ちらりと見ると、足元に置いておいたボールを手に取り、何とも間の悪いボール捌きを見せる。
ルシアン・ネイル。
マジックは超一流なくせに、ジャグリングはそう得意でもなかったらしい。
あー、直してやりたい…。いやいや、この嫌な寒さで人が消える前にもうひと稼ぎしに行きたい。
あとはボールを入れるスペースだけ残して片付けを終えたオレは黙ってルシアンがボールを返してくれるのを待つ。…が、一向にその気配がない。

「返していただけマセンカ?」

己の禁を破って小声で話しかけると、

「ああ、ごめんね、ねえちょっとやってみてよ」

と返って来た。一緒に六つのボールのうち三つを差し出される。
仕方ない。

「じゃあ一回だけデスヨ」

軽く息を吐いてそれを受け取った。

ボールジャグリングの基本は一つ一つを目で追わない。同じ軌跡で投げ上げる。
そうすれば自然と元の位置に戻って来るモンだ。
あーこれってばオレのショーと根本が一緒じゃねー?
余計なことを考えながら目を瞑っても出来るスリーボールシャワーをやっていると、視界の隅にちらっと違う動きをするボールが見えた。
一瞬軌道が崩れたがそれを掬い上げ、高さを少し上げる。
どういうつもりですか?という表情で首をかしげて見せると、四つ目のボールを放った張本人はちょっと笑った。
更に五つ目、六つ目と、実に微妙なタイミングで投げ入れられる。
それでもなんとか落とすことなく、シックスボールのシャワーが完成した。
軌跡はスリーよりもずっと高い。

「…もうよろしいでショウカ?」

左手に四つ、右手に一つ。
最後に高く投げ上げた白が落ちてくるのを待ちながらルシアンに問いかける。

「まって」

ルシアンはオレが最後にキャッチした白いボールに手を当てると、さっと持ち上げた。
白いボールは一流マジシャンの彼の手の中で一羽の白鳩になる。
ボールをトランクの空きスペースにぼとぼと落としながら「何ですカ、急いでるんデスヨ」と小声で囁けば、「ああ、ごめんね」と鳩をボールに戻して投げ返してきた。
ふわりと緩やかな軌跡を描いたそれは、どういう仕掛けかオレの手の中に納まった時には赤いリボンの付いた小箱に替わっていた。

「あげる、お店で配ってたんだけど、あまっちゃって、あ、それダメだったら誰かにあげてね」

余った。
それなら次のアシ入りの時にでも渡してくれれば…と考えてふと気付いた。
少しためらってから「ありがとうゴザイマス」と、トランクではなくポケットに仕舞う。

「今日はもうあがるノデ、メイク落とした後でよろしければお茶しまセンカ?」

まー間違いかもしんないケド。
ちょこっとだけ暖かい気持ちになったオカエシに。

返事を聞く前にトランクを持ち上げかけ、思い出した。

「あと、ボール、返していただけマス?」

右手を差し出すと、

「もう、返したじゃない。自分でトランクに仕舞っていたくせに」

彼はにっこり笑ってトランクを指差しウィンクした。
…あれ?そーだっけ?
逡巡したわずかな隙に差し出した白手袋の手にルシアンの手が重ねられた。

「さっさと行こうよ、奢ってくれるんでしょ?」

「…まぁ、ホットチョコレートくらいデシタラ。」

一見一般人に引っ張られるホワイトフェイスなんざさぞかし見物だろう。
通行人が好奇の目でオレたちを見ては二月の風をまとって通り過ぎて行く。
ご機嫌らしいルシアンにメイクのまま店に放り込まれるまで、オレはその風にすら好意を持った。
…ほんのちょこっとだけ。


<END>

●書いていただいたものに余計な部分をくっつけたため長い長い。
まさか裏路地からルシアンさんが出てきてくれるとは…驚きました(私が)。
口調はこちらではC.Cらしく直させていただきましたが、内容は変えていません。
クラウン・クラウンは寒いのが嫌いです(でもウインタースポーツは好き)。

文中の「ホワイトフェイス」、これはクラウンの種類の1つです。顔が白基調のwhite faceは優雅で洗練された上流気取り。
他に目と口の周りを囲ったのを「オーグスト」(auguste/ドジ・お間抜け系キャラ)、前記の2種に当てはまらないメイクなのを「キャラクター」(character)と呼びます。characterが1番人間に近いキャラ作りになっています。
ちなみにかの喜劇王チャップリンは「キャラクター」に分類されます。(豆しばー)
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コメント 2

らけ

おおおわあああ!
なんか一つの小説を双方からみるのっておもしろいですねω^!
クラウン君のさばさばしている所がまたかっこいいです//
口調は変えてもらってよかったです、ばーっとかいて口調の見直ししてなかったので←

最後の豆しばとっても役にたちましたー!
ルシアンは過去に大道芸で猛獣ピエロをしていた設定があったんですが、
じゃあルシアンはオーグスト?クラウン君とはジャンルが違ったんですねー
あるていどマジックを調べてみたりしていますけどヤシロさんの豆しばには毎回お勉強させていただいてますv
これからも楽しみにしてまs
by らけ (2010-02-08 17:46) 

ヤシロ

素早い!
またこのような文章になってしまいました…あはー☆
視点替えはよくやりますYo。楽なので(ぼそり)。
さばさばしすぎて「こいつ絶対女性の敵!」とか思いながら書いてました。性格ですからね、多分仕方がないんです。
勝手に変えちゃって良かったかな~と少し気になっていたのでそう言っていただけて一安心で…え、見直ししないんですか?(笑)

メイクが今と同じならルシアンさんは元から「クラウン」ではなく「ピエロ」の分類だと思いますよー。「クラウン」のスキルにさすがに猛獣はなかったような…。
それと、「ピエロ」は悲しみも表現する道化師だそうで、涙形のペイントが入っていることが多いそうです。
じゃなきゃかなり素顔に近いからキャラクターかなぁ?はて?
毎回まともに使えない豆しばですみません。
こういう無駄知識大好きなんですよ(苦笑)。
by ヤシロ (2010-02-08 19:49) 

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